アニメ『それでも世界は美しい』感想――おてんば姫とませガキ王と慈愛のアメフラシの歌――
こんにちは。
小山内藤花です。
自分は動画見放題サイトでアニメをよく見る方ですが、
たまにあまり自分にとって興味なさそうだな~と思う作品にも目を通したりします。
レビューとか評価とか気にしないで、何の気なしに見たものが、案外面白かったりすると、それだけでうれしい気持ちになるものです。
さて、そんな風にして見つけた今回の作品が、
『それでも世界は美しい』というものです。
あらすじ
鎖国国家「雨の公国」の第4公女ニケ・ルメルシエは、「晴れの大国」の王・リヴィウス1世に嫁ぐことになります。
小国・雨の公国の自治権を認める代わりに、最も美しい娘を妃にと要求され、
顔も見たことない王の下へとはるばる長い旅をして赴くと、、、
なんと、王は、子どもだったのです。
リヴィウス1世は要求します。
雨を降らせろ、と。
実はニケの故郷・雨の公国は代々天候を操る術を受け継いでおり、
ニケもまたそれを身に着けております。
しかし、ニケは余興で術を披露することを拒絶。
のみならず、リヴィウス1世がその年に反して、どうしようもなく心が渇いていることを感じます。
勝気な性格のニケはリヴィウス1世と衝突を繰り返しますが、
彼を放っておけない気持ちに動かされ、粘り強く彼と向き合う内に、
相手の方も次第に心を開いていき、互いに惹かれ合っていく、、、
おてんばとませガキ
この作品の魅力の一つとして、ニケとリヴィウス1世(以下、リビ)との組み合わせがあります。
ニケ姫はお転婆で、本来位の高い身分にも拘らず自由奔放に振る舞っております。
晴れの大国に上陸するときも、共の者を返して単身で城に向かうのですが、
一人で一般の宿に泊まろうとしたり、途中で被害に遭わされた盗賊を撃退したり、
挙句、入城に際して、その身元を怪しんだ衛兵といさかいを起こして罪人のように王の面前に引っ立てられたりと、全くお姫様らしくありません。
対してリビは相当お高く留まったませガキです。
年齢に似合わぬ高い知能と、庶子ゆえの敵対勢力からの憎悪の影響で、周りに対する冷淡さと蔑視の態度が身に染みついております。
ニケに対しても、最初の内は、その破天荒な性格を単に面白がっているだけでした。
が、ニケは屈しません。たとえ数年で諸国家を攻め滅ぼし、敵対勢力を次々と粛清した暴君だろうとです。
どっちが子どもかと思ってしまうほど正面から言い返し、喧嘩に発展することはしばしば。
そして、彼女の思いやりはリビの心に沁みわたっていきます。
雨を呼ぶ歌を歌うごとに、彼も感化されていき、
かけがえのない存在となったニケを守るためならば、時に大胆な行動をもとらせるようになっていきます。
絆が深まっていくごとに交わされる言葉は、慣れていない身としては中々こそばゆいところもありますが、
概してニヤニヤ見ることができました。
リビに関しては俺様的な王子様台詞連発なので、「このませガキめぇ~」
と突っ込まずにはいられません(笑)。
アメフラシの歌
また、作品のもう一つの魅力として、ニケが歌うアメフラシの歌があります。
これは彼女がその世界の美しさを実感したときに発動させることのできる雨呼びに使われる歌で、なんのかんのと決まりがあるようですが、
まあ、話の一番盛り上がるところでよく出て来ます。
ニケの気持ちの乗った歌が呼んだ雨、その温かい滴が、
リビの心の渇きを癒していく様を見ると、ぐっとくるものがあります。
そんな歌ですが、少し賛否両論あるかもしれません。
というのも、舞台が中世をイメージした技術が未発達の異世界なので、
曲調がやや現代っぽ過ぎる感が否めないからです。
ですので、物語が盛り上がってきたときに、この曲が入ると、聞く人によっては若干シラケてしまうかもしれません。
自分も最初の頃は、おや、と違和感を感じたものでした。
しかし、回を追って、最後の方に出て来るおばば(ニケの祖母・師匠)が歌う時、
雨の公国の古い言葉で、しかも呪術的なそれっぽい感じが出ていたので、
ニケの歌う歌は、彼女自身の新しい世代の歌なのかな、という解釈もできました。
また、リビとの関係性が深まっていくごとに、彼に対する、そして世界に対する、彼女の慈愛が強く印象付けられてくる点は、いいな、と思いました。
まとめ
今回紹介しました『この世界は美しい』という作品は、一組の男女が、数々の困難を共に乗り越えながら、絆を深めていくお話でした。
天候を操る術を持った小国の公女と、出自や環境のせいで年に似合わず大人びてしまった幼い太陽王を取り巻く世界は、二人を祝福してくれるものばかりではありません。
複雑な力関係の中で、二人を引き離そうとする勢力が次から次へと現われてきます。
そのような中で時に反発し合い、時に気遣い合いながら、二人は愛情を育んでいくのです。
好き嫌いは分かれるかもしれませんが、一度見てみるのもいいかもしれません。
新たなジャンル、作品との出会いがあるといいですね。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。