高速バスの渋滞が怖いのは……

こんにちは。

小山内藤花です。

 

実家の方から神戸の方に帰ってきました。

高速バスを利用したので、当然のように渋滞に引っかかり、大分時間がかかりましたが、無事帰れて何よりでした。

 

無事帰れて、というのは、少々大げさかもしれませんが、

実のところ、バスの中で少し緊張感が高まることがあったために、バスターミナルに到着したときは、いつも以上に安堵したのです。

 

あおり運転やなどのニュースを、最近よく耳にする機会があることも、こうした緊張を高めたのかもしれません。

 

しかし、

普段何事もなくバスや電車や、その他交通機関を利用するにあたって、

今回のように渋滞などのトラブルが発生した際、なかなか恐ろしい状況になっているんじゃなかろうか、と思ったりしました。

 

 

お盆も終わり、自分が乗っていたバスは、満員でした。

乗客はだいたい20代から50代の間。中には子連れの方も。

 

バスのクーラーは十分に効いていましたが、待合室はそこまで涼しくなく、

人であふれかえって、蒸し暑い外で待たざるを得なかった人たちもいました。

乗る前からかなり疲れるような状態だったのではないかと思います。

 

道のりの前半は順調でしたが、

サービスエリアで休憩も取った後、

火災の影響で交通規制がかかり、渋滞に。

 

単なる渋滞でもなかなか精神的に堪えるものです。

同じ姿勢で座っているのはとても疲れますし、外に出て深呼吸したり、運動したりすることもできません。

体がしんどくなってきて、早く家に帰りたいのに、なかなか進んでいかない。

ただでさえ、イライラが時間を追うごとに募っていきます。

 

 

そして、その日、静かになったバスで、緊張が高まりました。

 

渋滞中のバスは、かなり静か。

ひそひそ話をするのでもなければ、バスに乗っている人全員に会話の内容が聞かれてしまうのも避けられません。

ちょっとくしゃみや咳をするのでもちょっと憚れるのではないでしょうか。

 

その日、渋滞していて、道の先ずっとテールランプがついたり消えたりしている列に従って、ゆっくりゆっくり進んでいくバスの中は、

まさにそのような静けさでした。

 

そしてそうした中、聞こえてきたもの。

ガチャガチャという音と、二人の若い男性の笑い声。

どうやら、ゲームをしていた模様です。

 

普通にバスが走行していたときには全く気づきませんでしたが、

渋滞で社内の音がはっきり聞こえるようになったその時、二人が楽し気に遊んでいる音は、恐らく全員に聞こえていたと思います。

 

自分の中で、一気に緊張感が高まりました。

その二人は、二人なりに周りに気を遣っているのか、声は抑えていました。

が、いくら音量は小さくとも、携帯電話で通話しているのと同様、自分と関係のない、プライベートの音が否応なしに耳に入ってくるというのは、いくら楽しそうなものとはいえ、神経に触るものがあるのではないでしょうか。

 

予め申し上げておきたいのは、何も二人のマナー云々ではなくて、

こうした、逃げることができない、見ず知らずの人たちが密集している場で、

緊張感が高まった場合、

それが伝播していく恐ろしさがあるということです。

 

 

段々と、バスの中の雰囲気が悪くなっていくような気がしました。

これといった兆候はなかったのですが、

公衆の面前で見ず知らずの人に注意するという行為に及ぶのができないために、

不満だけがむくむくと高まっていくような気配です。

 

車内のどこかからか、咳払いが聞こえてきました。

その二人に対するそれとない注意のつもりだったのかは分かりません。

ただ、そう受け取っても差し支えない印象はありました。

わざとらしいとも、そうでないとも言えそうな。

 

楽しげな音は依然として続いていました。

 

自分は少し不安になりました。

早く帰りたいのに帰れないイライラを抱えた何十人もの乗客の中で、

二人だけゲームをして楽しそうに笑い声をあげていることに対し、

怒りの沸点に達した人が出てきたら、と。

 

そしてまた、

その怒りに対し、

二人が不本意なものと逆上したら。

その怒りがさらに別の人間にストレスを与え、

ぎりぎりまで我慢していた人たちまで、堰が切れたように怒号を上げ始め、

ついにはバス全体が、喧噪状態に陥ったら、と。

 

 

そんな風に一人、可能性の低い妄想を抱いて、内心びくびくしていたところ、

その日緊張が最高潮に達する瞬間がやってきました。

 

「うるさい」

 

女性の声でした。

いやあ、緊張しました。本当にひと騒動あるのではないかと。

しかし、それはありませんでした。

 

 

どうやら、その女性は男性客二人の連れの方だったようで、

今度うるさくしたら歩いて帰ってもらうからね、

などと脅しており、

圧倒的にその女性の方が、力関係において上位みたいでした。

 

 

それから二人はさらに小声になって、

バスが渋滞を抜け、

最後には、何事もなく神戸にまで到着できた、という次第です。

 

 

その日のことは、別段、書き留めるようなことではなかったのかもしれません。

が、

緊張感が伝播する、という点においては、

少し怖いな、という思いをしました。

 

見ず知らずの人たちが密集している、逃げ出すこともできない空間。

その中で高まる不満。

注意したくともできず、

イライラを発散させたくとも、できない状況。

 

それが限界を迎えた時に起こる騒動。

怒りが怒りを呼び、収拾のつかなくなってしまう場。

 

 

くだらないことをつらつらと書き過ぎてしまったようです。

フィクションの中くらいでしか起こりそうもない状況にこれだけ警戒心を抱くのは、

全く経済的ではありませんね。

 

 

要するに、今回の話は、

高速バスの渋滞のイライラ、爆発しやしないかひやひやした、

です。

 

思えばそれは、

電車の中とかで、赤ちゃんが泣いている時にも、

感じていたようでした。

今、誰かがイライラしてるんだろうなあ、と。

 

それが今回は、高速バスというかなり人がぎっしり詰まっている場で起こっていたにすぎないものでした。

日常的にそのようなことはあったのです。

 

そのことに気付けたのが、今回唯一の収穫かもしれません。

 

 

 

このような話にここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。